デュシャンのトイレ〜いろいろなトイレ

 東京の板橋区立美術館の男子トイレにちょっと変わったトイレ(小便器)がある。縦型のトイレのまん中に旧式のトイレが設置されている。そのトイレの上にプレートがあり、何やら説明が書かれている。

     "使用する現代美術の作品"


この牛波(niu-bo)氏の作品は、便器として使用するために作られた作品です。マルセル・デュシャンが1947年に「泉」と題した作品を作りました。日常、便器として使用していたモノを、唐突に作品にしてしまいました。それまで、美術作品は作家によって作り出されるモノでしたが、デュシャンは、日用品の見方を変え、新たな題名を付けることで美術品を作ってしまったのです。当時は、狂気の沙汰であったデュシャンの芸術概念こそ、今日の現代美術の父となっているものです。牛波の作品は、デュシャンの冒険を、もう一度、もとの形に戻してしまうという概念それ自体をアートにしたものです。
便器として使用する私たちの行為が現代美術の歩んできた美術史を顕彰すると考えると、どこか愉快ではないでしょうか。


牛波(NIU-BO)
(泉水) Fountain, 1993



 これはマルセル・デュシャンの有名なトイレの作品を、逆に実用化したものだった。板橋区立美術館内のトイレにあるこの作品は、ご婦人方には鑑賞する機会がないものだ。いや、こんなものがあることさえ知らないだろう。

 トイレついでに、茶碗などが専門の智美術館のトイレはなかなか瀟洒で上品だった。小さな美術館とは言え、小便器が1つだけというのは、実用性よりは美学を重視したのかもしれない。

 もう取り壊されてなくなってしまったが、京橋にあった片倉ビルには大理石の小便器が並ぶ男性用トイレがあった。これがなかなか見事な作りだった。当時、片倉ビルにはかねこ・あーとギャラリーが入っていたし、映画美学校もこのビルにあった。現在、その跡地には東京スクエアガーデンができている。