穂村弘と瀧波ユカリの対談がおもしろい

 資生堂のPR誌『花椿』に穂村弘の対談が連載されていて、これが楽しい。2月号は瀧波ユカリと対談している。瀧波については知らなかったが、『臨死!! 江古田ちゃん』というマンガの作者ということだ。

穂村  『臨死!! 江古田ちゃん』を読んだ男性はみんな、瀧波さんに会うと緊張にさらされると思います。僕も数年前はじめてお会いしたときは緊張した。
瀧波  気づきませんでした。私が誰と会ってもそんなに緊張しないので、そこに対する想像力が働かないんです。
(中略)
瀧波  「それできない!」ってことがないですね。
穂村  それも意外。もっと引っ込み思案な人が描いているイメージなのに。
瀧波  極端なことは試せるんです。もしも結婚してなくて誰ともつきあってなかったら、ふらっと男の子が寄ってきて「ホテル行こうよ」って言われたらたぶん「行こうなか」って思います。
穂村  どこに判断の基準がるの?
瀧波  その子が部屋にはいってまず冷蔵庫を開けるのかお風呂を確認するのか、とか。朝になるまでにすごい量の情報があって、そこに興味があります。
穂村  前にある女の子が、カラオケボックスで二人きりでいる時に男性のひざに手を置いたら、その瞬間キスしてくる人と、固まる人に分かれるって言っていて、変に感心しました。同性の反応って自分で見ることないから。
瀧波  サンプルがあると安心?
穂村  僕はそう。みんながこういう時どうするのかすごく知りたい。自分の行動が合っているのか自信がない僕みたいなタイプは、”江古田ちゃん”の作者と話すとなるともう、一個ずつの受け答えの正解がすごく細い道にしかなくて、踏み外すと地獄に堕ちるイメージ。
瀧波  あはは。正解はないですよね。

 私だったら、ホテルに入ったらまずお風呂を確認するし、カラオケボックスで女の子にひざに手を置かれたら固まってしまう。穂村の言う「同性の反応って自分で見ることないから」「みんながこういう時どうするのかすごく知りたい」というのは分かる気がする。とくに○○○のとき、ほかの男たちがどうしてるかちょっと気になる。友人が彼の○○○をビデオに撮ったのを見せてくれたとき、自分といろいろ違うことに驚いた。同時に彼はいつもワンパターンで、振り返れば私もワンパターンだった。経験を積んだ女性と付き合った友人が、彼女から少し変わった方法を教えてもらったと言う。彼女の昔のパートナーから教わったというその一種特殊なテクニックを友人が試したところ、相手によっては驚くべき効果を発揮した。彼は私にも教えてくれたのだが、残念ながらまだ試す機会に恵まれていない。人は様々なのに、一般になかなか同性のことを知る機会が少ないのだった。
 そう言えば、題名は忘れたが吉行淳之介の小説の中で、主人公が推理小説を考えている話があった。病気で死が近い夫が妻に何か性的なクセを仕込んでおき、夫が亡くなったあと再婚した妻がそのクセによって新しい夫を殺すことになってしまう、というような話だった。ミステリを考えている主人公は、その決定的なクセを思い浮かばずにいるのだが。

 穂村弘の対談はいつも楽しめる。作家の川上未映子との対談も興味深かった。そして毎回対談相手と二人のツーショットが掲載されている。たいてい銀座の資生堂ビル前だ。穂村は脚が長くて甘いマスク、ハンサムで女性に人気があるのがよく分かる。いつも脚を交差させて写っている。ちょっとだけシスターボーイっぽいのだけれど。