西村画廊の5年ぶりの押江千衣子展を見て

 押江千衣子の個展が日本橋西村画廊で開かれている(6月14日まで)。彼女のペインティングの個展は実に5年ぶりだという。ベルギーに1年間留学していたとはいえ、やはりスランプだったのだろう。13年前に京橋のINAXギャラリーに登場したときのあのみずみずしい絵を忘れることはない。翌年、東京画廊で2人展、ギャラリー山口で個展、その2年後西村画廊で個展と一流画廊で立て続けに取り上げられ、結局西村画廊の専属になった。それから徐々に徐々に彼女の絵がつまらなくなっていった。
 今回5年ぶりの個展ということで期待を持って見に行った。雑誌に紹介されている作品も彼女の復活を思わせた。実際に作品を見た印象は、作家は苦しんでいるのだろうということだった。西村画廊が自信を持って発表しているのだから悪い作品ではないのだが、13年前の作品を知っている身としては「めでたく復活!」という訳にはゆかない。山のシリーズの大作が今回の目玉のようだが、押江の良いところが出ているとは言いかねた。わずかに小品のアジサイや果物にその片鱗がうかがわれる。
 押江千衣子はきわめて優れた感性と色彩感覚を持っている。それだけで夢のような登場をすることができた。そのためいったんスランプに陥ったとき、意識的な方法論を持たないために、そこからの展開が難しいのではないか。まだまだしばらくは苦しいときが続くと思う。しかし、またデビュー時のあの鮮烈な色彩、官能的な形を見せてほしい。