岡田茉莉子、わが憧れの女優


 シネマヴェーラ渋谷で「吉田喜重レトロスペクティブ-熱狂ポンピドゥセンターよりの帰還-」が始まった。吉田喜重監督作品19本が6月21日から7月11日までの3週間で上映されるのだ。その2日目の「秋津温泉」を見て、主演の岡田茉莉子の46年前の美しさに圧倒されていた。すぐに吉田監督と岡田茉莉子トークショーがあり、退屈するのではとの心配は杞憂に終わり瞬く間に40分が過ぎてサイン会になった。監督と憧れの女優にサインをいただきさらに握手まで。中学生のとき、NHK大河ドラマ「三姉妹」で主演の岡田茉莉子を見て憧れた日から、まさか45年後にその人と握手できる日が来るなんて、想像もできなかった。小さな手だった。監督の手は印象に残っていない。
 岡田茉莉子は1933年生まれだから現在75歳、きれいな人なのだ。なぜその年齢でいまだにきれいなのか? それは私が過去の岡田茉莉子を投影して見ているからではないか。そんなのは幻想ではないかと言われるかも知れない。そうではない、美は客観としてあるのではない。すべての美は幻想と切り離せない。むしろ美は幻想とともにあるのだ。だから私にとって、岡田茉莉子はいまでも美しい女優なのだ。
 シネマヴェーラ渋谷では何年後かに岡田茉莉子特集をやる予定だという。岡田茉莉子も自伝を書く準備をしているようだ。何という楽しみだろう。自伝には口絵に写真をいっぱい載せてくださいとお願いをしてきた。
 ピアニストの中村紘子が少女だった時、ソ連のピアニスト、エミール・ギレリスが来日し、握手をしてもらった中村は10日間手を洗わなかったという。私は還暦近い落ちついた紳士だから、帰宅するとすぐうがい手洗いを実行した。