佐野洋子『友だちは無駄である』(ちくま文庫)を読む。匿名の誰かのインタビューに答えるという形式をとっている。佐野の語る友情論だ。最初「ちくまプリマ―ブックス」というヤング向けの新書として刊行された。匿名のインタビューアーが子供の頃の佐野の交友関係、中学生になってからの、高校生の、大学に入ってからの交友関係を訊いている。
中学のときに親しい友人たちができて、卒業してからもずっと付きあっていて、今も付きあっているという。東京芸大の受験に失敗してデザイン科を目指す予備校に通う。「私はデザイン科の予備校に行ったわけだけど、もうそれは、志同じなのが、組織的に大量に集まっていたんだよ。それで、また自然になんとなくグループが出来てるんだよね」。「今、いちばん親しくしているの、その時代の友だち?」という質問に、「そうだね」。と答えている。予備校を卒業したあとも友情は続くわけ? との質問にも、「うん、続いていた。むしろ、大学にはいってからの友だちより結びつきが強かったと思う」と。
質問者から、佐野に親しい女友だちから毎日電話がかかってくるんでしょ、と言われ、「私が女友だちと何話しているか知りたい?」と佐野が答え、最後の章でその女友だちとのやり取りが40ページにわたって紹介されている。
インタビューアーの名前がどこにも記されていない。編集者にしては親し気に話していると思っていたら、あとがきで佐野が明かしていた。谷川俊太郎だった。佐野の2度目の配偶者で、このあと離婚している。
若い人に友だちを作ることの意味を具体的に伝えるということでは良い本に仕上がっていると思う。ただ、佐野洋子のファンとしては、やはり多少物足りない印象なのは否めない。表紙のイラストおよび本文中のさし絵は広瀬弦とある。佐野の息子のイラストレーターだ。親子で同じ職業だとどうしても比べられてしまう。やはり佐野洋子のイラストは傑出していると思う。
- 作者: 佐野洋子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/02/01
- メディア: 文庫
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