東京銀座のギャラリー58で松見知明展が開かれている(8月6日まで)。松見は1984年、福井県生まれ。2010年に福井大学教育地域科学部美術教育サブコースを卒業し、2012年に同大学大学院教科教育専修美術専攻を修了している。初個展は2011年にこのギャラリー58で行って、大きな木彫作品を展示した。それは少しヘンリー・ムーアにも似て、横たわる人を木で作っていたが、顔のところに大きな口があった。口が顔なのだった。
今回も大きな容器のようなものを展示しているが、その容器の口が生き物の口にも見える。擬人化というか擬物化というかそんな印象を持った。カタログに松見のテキストが載っている。
私は、自身の存在をこの世の無数の生きものたちの一つと考えたとき、この身体でいることが不思議だったり、怖かったりする。でも、その感覚になることが、外の世界の本当を知る手がかりになると期待している。不安に似た気持ちと少しの期待から私の制作は動き出し、一つの生きものを誕生させる。
なるほど、前回の個展も今回の作品も、松見の考える「一つの生きもの」なんだ。そういわれると、松見の作品がよく分かる。今回は4つの作品が展示されている。ここに掲載した3つの作品は、麻やヤシ繊維などで作られている。足は流木だ。作品は中空になっており、 いずれも大きな口が開いている。
展示にはなかったが、カタログに載っていた写真で見る「VOICE」という間伐材で作られた作品がすばらしい。高さ6メートルを超える大きな作品は、不思議な生き物が大きな口を空に向けて開き何か叫んでいるように見える。これだけ大きいと屋内で展示するのは難しいかもしれないが、どこかで見てみたい。
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松井知明展
2016年7月25日(月)−8月6日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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ギャラリー58
東京都中央区銀座4−4‐13 琉映ビル4F
電話03-3561-9177
http://www.gallery-58.com