レオン・フライシャーが亡くなったと朝日新聞に報じられていた(8月4日)。
フライシャーはアメリカのピアニスト、8月2日、92歳で亡くなった。
記事に「30代で筋肉が収縮する難病となり、長年にわたって左手で演奏を続け、指揮、教育に活動の場を広げた」とある。
この難病とはフォーカル・ディストニー(局所ジストニア)のことで、フライシャーはピアノを弾こうとすると右手の指がおそらく硬直して弾けなくなる。私も同病だから少しは分かる。
世界的に著名なピアニスト、レオン・フライシャーはある時突然局所ジストニアが発病する。ピアニストでありながら右手の自由が奪われる。もう演奏ができなくなる。彼は教育の場に活動を移した。しかし練習は続けていたという。35年後病気から回復する。完全に回復したわけではないと言っていたが。2009年12月NHK教育テレビで日本でのリサイタルが放送された。
レオン・フライシャーはバッハの小品3曲と同じくバッハ作曲、ブラームス編曲の左手のための「シャコンヌ」、それにシューベルトのピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D960を演奏した。シューベルトは柔らかい演奏だった。
番組の始めに横浜市大学病院の酒井直隆さんというお医者さんが出演してアナウンサーの質問に答えていた。ジストニアには全身性のものと局所性のものがあり、音楽家では演奏中にのみ手が勝手に動いてしまう局所性ジストニアが発病すると解説していた。治療法には3つあり、1.ボツリヌス毒素の注射、2.リハビリ、3.脳外科手術、という。ボツリヌス毒素は万人に効くものではなく、効力も3ヵ月しか続かない。しかも日本ではまだ認可されていない。酒井先生はリハビリを勧めている。ゆっくり演奏した場合には症状が現れないので、徐々に速くしていけば改善されるという。脳外科手術については何て言ってたっけ。
私もこの局所ジストニアにかかっている。万年筆で字を書いた時にのみ発症し、右手の人差し指が強い力で内側へ曲がってしまい、文字が乱れた形でしか書けないのだ。
私は所沢の防衛医科大学病院整形外科で指の診察を受けて、書痙(しょけい)だと診断された。局所性ジストニア(focal dystonia)の一種である。よく作家がなったと聞いた病気。原因不明で的確な治療法もないという。古い辞書を引くと、書痙=心身症の一つ。字を書こうとすると、疼痛あるいは痙攣を伴い、書くことが困難となる。速記者・代書人・文筆家などに見られる。最近ではピアニストやギタリストの症例が報告されている。
しかし患者数が少なく専門学会はないと聞いている。