沼野雄司『現代音楽史』が素晴らしい

 沼野雄司『現代音楽史』(中公新書)を読む。これがとても素晴らしい。沼野は東京藝術大学大学院で音楽研究科を修了し、現在桐朋学園大学教授。

 現代音楽について、膨大な数の作曲家を取り上げ、その代表作を詳しく紹介している。しかもそれが単なる羅列ではなく、全体にストーリーをもって構成されているという見事さだ。

 ファシズムへの抵抗から「数」に注目し、電子テクノロジーの導入、パリの五月革命による大きな切断、新ロマン主義の復活、そして21世紀の音楽状況と、生々しい現代音楽の世界が見事に整理されている。

 巻末の索引が充実していて、作曲家を中心に500項目を越えている。日本人作曲家も武満徹を始め、30人近くが紹介されている。もう至れり尽くせりと言ったところだ。

 一つだけ不満だったのは三善晃の名前がなかったこと。私が初めて現代音楽に触れたのが、1974年の三善晃作曲チェロ協奏曲第1番、堤剛チェリストで新宿厚生年金会館だった。三善晃で忘れられないのが、1984年の民音現代音楽作曲祭で初演された「響紋 オーケストラと童声合唱のための」だった。

 あと権代敦彦が採りあげられていれば文句はないが。でもデイヴィッド・デル・トレディチが紹介されていて予想外で嬉しかった。