近所の小さな公園でカンアオイが咲いている。カンアオイはアオイ科ではなくウマノスズクサ科、多年草の小型植物。地を匍匐して繁茂する。葉の模様がきれいなものが多いので観葉植物として栽培されている。関東以西に分布する日本固有種。
花といってもガク片からなり、地面すれすれに地味な花を咲かせる。匂いで誘ってナメクジやヤスデなどを誘引して花粉を媒介するらしい。
分布の拡大については、成長が遅いため生息範囲が広がりにくく、植物学者の前川文夫は生息範囲の移動速度を「1万年で1km」と見積もっていると言う。これが本当なら1年間に10cmということだ。
カンアオイで特筆すべきことは、ギフチョウの幼虫の食草ということ。ギフチョウが成長するためにはカンアオイが欠かせない。
カンアオイを詠んだ鬼城の句、
軒 下 の 日 に 咲 き に け り 寒 葵
私の駄句、
寒 葵 知 ら ぬ 顔 し て 花 の ご と
寒 葵 誰 に も 花 と は 知 ら れ ず に
寒 葵 誰 に も 知 ら れ ず 咲 き 終 わ り
寒 葵 誰 も お ま え に 気 づ か な い
寒 葵 花 の 奥 に は 闇 が あ る
寒 葵 い つ も 静 か に 夜 が 来 る
寒 葵 施 設 で 母 が 待 っ て い る
寒 葵 や っ と あ な た に 会 え た 午 後
寒 葵 い ち ど は 舌 を 入 れ た こ と