正月の花

 近所の小さな植物園で正月の冬の花が咲き始めた。

 まず福寿草

 それからカンアオイ(寒葵)も咲いている。写真の中央の褐色の口を開けた蛇みたいなのが花だ。およそ被子植物中もっとも地味な花のひとつではないか。カンアオイウマノスズクサ科、常緑性多年草で日陰の林内に生育する。Wikipediaによれば、分布の拡大について「成長が遅いため生息範囲が広がりにくく、(中略)前川文夫は生息範囲の移動速度を「1万年で1km」と見積もっている」と言う。1年間に10cmであり、銀座の1丁目から8丁目の端まで進むのに1万年かかるということだ。
 しかし、何と言ってもカンアオイで特筆すべきことはギフチョウの食草ということだろう。ギフチョウは「春の女神」と呼ばれている華やかなチョウだ。その幼虫がカンアオイを食べて育っている。それで連想するのが宝井其角の句「あの声で蜥蜴(トカゲ)食らうか時鳥(ホトトギス)」。人は見かけによらないという意味だが、美しいギフチョウも美声のホトトギスも悪食なのだった。

 園の奥にはユズが黄色くなっていた。


 私の駄句
寒 葵 知 ら ず に 過 ぎ し 人 の あ り


寒 葵 気 づ か れ な く て 年 が 明 け