ベランダにスミレが咲いた

mmpolo2007-03-07




 ベランダの鉢植えのスミレが咲いた。右上の写真がそれ。
 スミレと言えば数年前、銀座2丁目の大きな駐車場の片隅にスミレの群落が出現した。下の写真だ。これはタチツボスミレだろう。見事な贅沢な光景だった。だが翌年にはこの光景は見られなかった。植生が変わっていったのだ。ドクダミやスギナが増えていた。年々歳々花同じからずだ。


 つぎは以前まだ会社勤めをしていた頃の話。
 クライアントを訪ねたら受付にヤマツツジが生けてあった。その朱の強い赤い蕾を見たとき不意に幸福感を覚えた。ヤマツツジの蕾は春の信号だったから。信州の冬は寒い。本多勝一が冬の伊那谷の住宅は世界で一番寒いと書いていた。エスキモーの住宅より寒いと。伊那谷の大きな産業が養蚕だった。蚕は暑さを嫌った。だから伊那谷の農家は夏涼しいことを目して建てられていた。必然的に冬の寒さは我慢することになった。そしてほとんどの家が農家だった。すきま風は普通だった。暖房はこたつだけ。皆背を丸めてこたつにあたるか囲炉裏を囲むか火鉢にしがみついていた。寒かった。冬の室内が氷点下になるのは普通だった。春は何よりも待ち遠しかった。ヤマツツジの蕾が膨らんだらもう嬉しい春だった。冬が去ったのだ。今で言う里山に登ってそれを見つけたときの嬉しさがいっぺんに思い出されたのだ。東京の真ん中、丸の内の大きなビルのしゃれた受付のカウンターにヤマツツジの蕾が生けられていた。うれしい春だ。