先の日曜日14日、一向にチョコレートの気配もないので近所の小さな植物園へ行った。福寿草が咲きほこっていた。午前に雨が降ったけど、午後こんなに晴れたから一斉に開いたのよと管理の小母さんが教えてくれた。
子供の頃、福寿草の芽が出たのを見つけると嬉しくて家族に報告した。信州伊那谷のつらい冬の終わりを知らせてくれるから。本多勝一によると、伊那谷の農家の冬の室内はエスキモーの住居より寒く、室内に限れば世界で一番寒いのだという。養蚕が主要な産業だった歴史から、蚕の飼育のために家屋の設計は夏涼しいことを何よりも優先した。そのため冬の室内の寒さは世界で最も苛酷なものとなったのだ。そんな村の生活では春が何よりも待ち遠しかった。春が来れば辛い寒さと別れられる。
ユキワリイチゲが咲いているのも小母さんが教えてくれた。咲きほこれば一面ユキワリイチゲって感じだが、まだご挨拶っていったところだ。福寿草もユキワリイチゲもキンポウゲ科の植物だ。
今年は蕗のとうが出ていませんねというと、あっちにちょとだけ出ているのよと案内してくれた。蕗のとうは苦みが強く春の野草として好物なのだが、スーパーに並んでいるのは栽培もので、あまり苦くないのがやや不満。福寿草の芽が蕗のとうに似ていて、時々中毒事件が報じられる。福寿草の方は有毒植物なのだ。