吉田秀和『音楽家の世界』を読む

 吉田秀和『音楽家の世界』(河出文庫)を読む。副題が「クラシックへの招待」で、本書は最初、雑誌『新女苑』の別冊付録として書かれ、その後1950年に単行本化され、さらに1953年に創元社から文庫版が出版された。だから70年以上前に描かれた入門書だ。

 古い入門書とは言え、ほとんど古さは感じられないし、教えられること多々である。クープラン、バッハから始まって、ハチャトリアンとショスタコーヴィッチまで、53人の作曲家の66曲が紹介されている。ベートーヴェンが最多の4曲、バッハとモーツァルトドビュッシーがそれぞれ3曲、2曲ずつ取り上げられているのが、ハイドンシューベルトシューマンチャイコフスキーで、ショパンブラームスもリストも1曲ずつしか取り上げられていない。

 何しろ53人の作曲家が紹介されているのだ。すこぶる贅沢な本だというのが読後の印象だ。これが入門書というのは納得できる反面、もっともっと取り上げてほしかったとも思った。

 改めて吉田秀和の偉大さを痛感した。