吉田秀和『ブラームス』を読む

 吉田秀和ブラームス』(河出文庫)を読む。吉田秀和は2012年に98歳で亡くなるまで長年にわたって音楽評論を書き継いできた。それらは時々の新聞雑誌に掲載され、出版された書籍も数多く、さらに全集も発行されている。本書は、吉田が発表してきたブラームスに関する音楽評論をまとめて文庫本に編集したもので、河出文庫にはすでに『マーラー』『フルトヴェングラー』『バッハ』『グレン・グールド』『カラヤン』『ホロヴィッツと巨匠たち』『クライバーチェリビダッケバーンスタイン』『ベートーヴェン』『私のモーツァルト』などが発売されている。こんな風に文庫本で発売してくれると手軽に持ち運べるし、本棚にもかさばらなくて収納できるのでありがたい。

 本書は題名通りブラームスに関する論考を集めているが、中では「ブラームス」という章が134ページと全体の4割ほどを占めていて圧巻だ。ブラームスの貧しい生い立ちからシューマンとの出会いと、14歳も年上のクララ・シューマンへの終生変わることのない愛、それともちろんブラームスの作品が詳しく分析し紹介される。本書を読みながら改めてブラームスのCDを取り出して聴き直してみたりした。

 意外だったのが、交響曲と協奏曲を除くと室内楽に関しては、ヴァイオリン・ソナタヴィオラソナタ、ピアノ・ソナタなどが採りあげられているくらいだったこと。いや、最初の「ブラームス」という評伝で幅広く言及されているので偏っているという印象はないが。

 それにしても私はCDを数百枚持っていて、そろそろ終活で断捨離を始めたというのに、また欲しくなったCDができてしまったこと。「4つの厳粛な歌」とか、晩年のピアノ小品、クラリネットソナタなどなど。

 この後も吉田秀和の本を読むたびに欲しいCDが増えていくのではないかと半ば恐れているのに。

 

 

ブラームス (河出文庫)

ブラームス (河出文庫)

  • 作者:吉田秀和
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: 文庫