小澤征爾×村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』を読む

 小澤征爾×村上春樹小澤征爾さんと、音楽について話をする』(新潮文庫)を読む。私は本書を書店に並べられているのを見て買ったが、奥付は平成26年7月発行となっていた。一方カバーの折り返しの著者紹介は、「小澤征爾(1935-2024)と小沢の没年が印刷されている。

 思うに平成26(2014)年に文庫として発売されたが、あまり売れずに在庫になっていたのだろう。今年小澤征爾が亡くなったので、改めてカバーを印刷し直して店頭に並べ

たのだろう。在庫が少なかったらカバーを刷り直さなかっただろうから、結構な数の在庫が10年間も残っていたのだろう。

 村上春樹小澤征爾に音楽について聞いている。それも小澤の指揮をした曲や演奏について専門的な質問だ。なるほど一般性がないかもしれない。新潮社が期待したほどは売れなかったのだろう。しかし、小澤征爾の指揮した音楽やクラシック音楽に興味があったら結構面白い内容だ。

 対談は2010年11月から2011年7月にかけて、村上の自宅や仕事場、ホノルルやスイスのジュネーブ、パリなどで行われた。単行本は平成23(2011)年に発行されたが、文庫版では、それに小澤征爾がジャズピアニストの大西順子と共演した「ラプソディ―・イン・ブルー」を聴いた村上のエッセイが追加されている。

 全体で470ページと長いが、対談形式なのですらすらと読むことができる。指揮者や演奏家についての小澤のプライベート(?)な感想も知ることができる。いくつも聴いてみたい曲や演奏が増えてしまった。