青柳いづみこ『ヴィンテージ・ピアニストの魅力』を読む

 青柳いづみこ『ヴィンテージ・ピアニストの魅力』(アルテスパブリッシング)を読む。ヤマハの会員誌『音遊人(みゅーじん)』に2012年から連載したもの。執筆時点でおおむね75歳以上のピアニストをヴィンテージ・ピアニストとして取り上げている。その数40人。知らないピアニストも何人もいる。

 詳しく紹介している人もそっけない人もいる。アリス・アデールは知らなかった。1945ン年生まれのフランス出身、アンサンブル・アデールを設立とある。アデールについて、

 

……どちらかというとコンテンポラリーの専門家と思われていたが、2007年に突然バッハ『フーガの技法』の見事なアルバムをリリースし、識者をあっと言わせた。(中略)

 2012年には、ラヴェルピアノ曲全集がリリースされた。録音はその10年前なのだが、まさに今、世に問うべき録音という気がする。『夜のガスパール』『鏡』『クープランの墓』。腕自慢のピアニストたちによって荒らされてきた作品が、すっかり洗いなおされ、テキストそのものとして立ちあらわれる。つくりすぎの厭らしさもナルシシズムの影もない。なかでも、「スカルポ」がこれほどまでに名人芸の垢をそぎ落とされ、喚起力豊かに弾かれたのを聴いたことがない。

 

 ルース・スレンチェスカについて。スレンチェスカは1925年アメリカ生まれ。

 

……82歳のときにはクララ・シューマンが使用した1877年製グロトリアン・スタインヴェグによるアルバム、84歳でブラームス晩年の小品を集めたアルバムをリリース。いずれも至芸ともいえる名演だ。

 

 そんなに言われたら、ブラームスの小品集は買うしかないだろう。

 フー・ツォンは1934年中国生まれ、1955年ショパン国際ピアノコンクール入賞。2020年に亡くなる。「……ほぼ独学のフー・ツォンは、生涯を通じて体系的な技術の不足とそれに派生する手の故障に悩まされた」。

 最後に自分自身青柳いづみこも取り上げられる。