東京外苑前のトキ・アートスペースで吉川和江展が開かれている(3月15日まで)。吉川は1945年東京生まれ、1969年に武蔵野美術大学を卒業し、1976年ドイツのハンブルグ国立美術大学に入学し、1986年に同校を卒業している。現在ハンブルグ在住。1983年ハンブルグの画廊で初個展、日本では1990年にギャラリー真木で個展を開いている。その後ギャラリーQ、ギャラリーNWハウス、などで個展をしたほか、2001年からはギャラリー現で10数回も個展を行ってきた。残念ながらギャラリー現が3年ほど前に閉廊してしまったので日本では静岡で個展を開いてきた。私にとっては4年ぶりの吉川和江展だった。
画廊正面に3枚×7列の21枚のパネルが組み合わさった大きな作品が展示されている。様々な人物が描かれている。欧米系やアフリカ系、アジア系など入りまじっているのは吉川の住むハンブルクの現状なのだろう。
右手には3枚×4列、計12枚のパネルで構成された作品が展示されている。人物や教会の塔、自然などが描かれ、右下には大きくNの文字が描かれている。これは何かと問うと、ノートルダムのNよ、と。燃えている塔はノートルダムか。
抽象的な大きな作品も2点並べられている。パネルが組み合わされているのはモンタージュだ。エイゼンシュタインを引用するまでもなく、モンタージュは個々の作品では明確に主張することが難しいメッセージ、思想を訴えることができる。ドイツではただきれいな絵画、作品は評価されないと以前聞いたのだった。同時に社会主義リアリズムのように直接メッセージを訴えるのはプロパガンダのそしりを免れがたい。安易なプロパガンダに陥ることなくメッセージを訴えるために吉川はモンタージュの方法を採っているのだろう。それはまた造形的な美を担保する方法でもある。吉川の個展を見るのは美を見る喜びだ。
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吉川和江展
2020年3月6日(金)―3月15日(土)
12:00-19:00(会期中無休、最終日16:00まで)
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トキ・アートスペース
東京都渋谷区神宮前3-42-5
電話03-3479-0332
http://tokiart.life.coocan.jp/