岡本勝人『「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム』を読む

 岡本勝人『「生きよ」という声 鮎川信夫モダニズム』(左右社)を読む。鮎川の詩を中心とした作家論。岡本はそれを吉本隆明との交渉史を中心にして書く。ほかに「荒地」の仲間たちの北村太郎黒田三郎田村隆一加島祥造石原吉郎らが登場する。また鮎川の父との関係が論じられる。石原吉郎吉本隆明を最初に評価して世に出したのが鮎川だったとは知らなかった。
 鮎川信夫吉本隆明について、「吉本隆明に文芸批評上の恩師がいたとすれば、小林秀雄を措いてほかにはない。」と書いていたという。
 私は鮎川信夫論を一度も読んだことがなかった。詩そのもの他はほとんど知らなかった。詩人についてはそれでいいと思っていたが、岡本の鮎川論を読んで教えられたことがたくさんあった。とくに詩人仲間との交渉史が参考になっておもしろかった。岡本は鮎川を丁寧に読んで詳しく綴っている。良い仕事をしている。
そう思う一方で、繰り返しや重複も多く、全体的に構成があやふやな印象も持った。「エピローグ」を読むと、2010年から2014年にかけて詩誌『交野が原』に連載したものを編集したものだという。
これを機に他の評論家の書いた鮎川信夫論を読んでみたい。また岡本に倣って、麻布十番の善福寺に分骨されているという鮎川の墓と、築地本願寺別院の和田堀廟所の佃墓所にある吉本隆明の墓に行ってみよう。


「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム

「生きよ」という声 鮎川信夫のモダニズム