吉増剛造『詩とは何か』(講談社現代新書)を読む。現代詩人の吉増が「詩とは何か」と題して語っている。文字通り語っているらしい。自分の喋りを録音して原稿に起こしている。
様々な詩人や哲学者、音楽家たちに言及する。最初にディラン・トマス、李白、エミリー・ディキンソンなどが紹介される。エミリについては特に詳しい。戦後詩では田村隆一、吉本隆明、吉岡実が取り上げられるが、この吉本と吉岡についても詳しい。そして唐突にカフカ、ついでパウル・ツェラン、「荒地」の鮎川信夫が語られる。
続いて西脇順三郎、石牟礼道子、黒田喜夫、映像作家のジョナス・メカス、原民樹、谷川俊太郎、タゴールとランボー、萩原朔太郎、ベケット、石原吉郎、ゴッホと並べられる。
ピアニストのアファナシエフの演奏の遅さに言及する。ギンズバーグのビート詩。そして自作の詩にについて語っている。道元が、ハイデガーが引用される。
田村(隆一)さん、あるとき武蔵野で、ケヤキを見てわたくしにおっしゃったことがありました。「吉増、わかるか、おまえ、あの木、あれは武蔵野の水が立ってるんだぜ」。そういうものが詩になってきて、「黒い武蔵野」の中で田村さんの肉声とともに詩の中で巨木が立っている、これはやっぱりすごい詩です。
「詩とは何か」との問いを立てているが、きちんと応えているようには思えない。様々な詩人、哲学者、音楽家が引用されているが、それらをじっくりと理解して展開しているようにも思えない。断片的に引用して、それに反応しているだけのように見える。
2016年、吉増の展覧会が東京国立近代美術館であって見に行ったが、詩人の展覧会というのも違和感ばかりがつのった。吉増の詩もよく分からない。総じてあまり有益な読書とはならなかった。