橋口幸子『珈琲とエクレアと詩人』を読む

 橋口幸子『珈琲とエクレアと詩人』(港の人)を読む。この詩人とは荒地グループの北村太郎を指す。橋口が住んだ部屋の隣に北村が越してきた。北村は大家さんの愛人だった。橋口と北村の親しい交流が語られる。橋口が部屋で校正の仕事をし、隣の部屋で北村が翻訳の仕事をしていた。

 ある時、大家さんの夫が越してくることになり、北村は以前橋口が住んでいた6畳一間のアパートに転居する。ここでは名前が明かされていないが、大家さんの夫は詩人の田村隆一なのだ。

 大家さんと田村隆一北村太郎の三角関係で大家さんは精神を病んでしまう。橋口がここから転居した後、田村は大家さんと別れ、ここから出ていく。

 北村は一人で寂しく生きていく。妻と離婚しないのは、妻に北村の年金を受け取れるようにするためだと言う。

 前に読んだ橋口幸子『こんこん狐に誘われて 田村隆一さんのこと』(左右社)でもそうだったが、時系列に沿うのでもなく、思い出す順に書いているように見える。ただ、橋口の北村に対する姿勢は優しくとても思いやりが深いことを感じる。読んでいてすごく気持ちの良い読書だった。

 巻末に画家の山本直彰が短い文章を寄せている。山本は橋口と親しい友人のようだ。

 北村太郎の詩を今まで熱心に読んでこなかった。これを機に読んでみようと思った。

 

 

 

珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎

珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎

  • 作者:橋口 幸子
  • 発売日: 2011/04/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)