吾妻ひでお『逃亡日記』を読む

 吾妻ひでお『逃亡日記』(日本文芸社)を読む。文庫とは謳ってないないが判型は文庫本だ。吾妻は2005年に『失踪日記』で漫画三賞を受賞している。それは日本漫画家協会大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞の3つで、この3つの大賞を受賞したのは吾妻ひでおだけだという。
 『失踪日記』は吾妻が実際に家から失踪した事実をマンガに描いたもの。失踪の1回目は埼玉県入間市近辺の雑木林でホームレスのような生活をし、警官の不審尋問を受けて妻に連絡されて連れ戻された。2回目はその2年後西武池袋線西武新宿線沿線地域に身をひそめ、やがてガス管工事会社に雇われて働いていたとき、同僚から借りて乗っていた自転車が盗難車だったため警官につかまり、やはり妻に連絡が行って連れ戻されたのだった。
 それを私小説ならぬ私マンガに綴ったものだが、本書はそのころのことを編集者からインタビューされたものを今度は文章で本にしている。漫画には描かなかったことも含め、当時の事やマンガの業界について割合赤裸々に書いている。
 失踪の原因はアル中とうつ病によるものだった。アル中の苦しさが淡々と書かれている。面白さでいえば、『失踪日記』には及ばないけれど、なかなか興味深く読むことができた。
 吾妻ひでおといえば、40年ほど前にカミさんの名前でファンレターみたいな葉書を出したことがあって、返事をもらっていた。その葉書が出てきたので娘にあげたら喜んでいた。経歴を見たら私よりも2歳若くて少し驚いた。


吾妻ひでおの「地を這う魚」を読んで(2011年6月23日)

逃亡日記 (NICHIBUN BUNKO)

逃亡日記 (NICHIBUN BUNKO)