竹宮惠子『少年の名はジルベール』(小学館文庫)を読む。竹宮のデビューした頃を描いた自伝。少女漫画でデビューし、同じくデビューしたばかりの萩尾望都と一軒家で共同生活をする。本書を巡って萩尾望都が『一度きりの大泉の話』を書き、この大泉時代に二人の葛藤があって、以後萩尾は一切竹宮との交流を断つ。
私は少女漫画にはほとんど興味を持たなかったが、とくにこの二人の大御所竹宮惠子と萩尾望都の漫画は読んだことがなかった。ただ伝記とか自伝が好きなので手に取った。
竹宮のデビューのエピソードは面白かった。将来の大物がなかなかヒット作が出ず、萩尾の才能に嫉妬していることが書かれている。のちのボーイズラブ(BL)として大成功を収めた『風と木の詩』が編集者に理解されず、なかなか掲載にまで持っていけない。
本書で語られているのはボーイズラブ路線が成功して売れっ子になる前までで、竹宮はその後京都精華大学教授から学長にまで大出世する。さらに日本マンガ学会会長、国際マンガ研究センター長にまで就任する。
本書のタイトルの「ジルベール」が分からなかったので検索したら、『風と木の詩』の主人公の名前で、『風と木~』の登場人物や簡単なストーリーも紹介されていた。竹宮の描くなよなよした少女漫画特有の人物やストーリーは私にはとうてい容認できないものだった。
本書で、「私や萩尾さんは1回見ただけで、映像をそのまま丸ごと、視覚的に記憶できたので、互いに興味を持った画面構成の面白さを確認し合うことができる」とある。やはりそうだったんだ。
そして、恩地日出夫監督のアニメ『地球へ…』の原作が竹宮惠子の漫画だったことを知った。恩地のアニメは見てみたい。