マンガ

萩尾望都『なのはな』を読む

萩尾望都といえば『ポーの一族』は私でも知っているし、今年紫綬褒章を授章した漫画家だ。毎日新聞の書評欄にその萩尾望都の新作『なのはな』(小学館)が紹介された(2012年5月6日)。筆者は「阿」と署名している。 サブカルチャーの筆頭といえるマンガは…

吉田秋生の「海街diary4 帰れない ふたり」を読む

吉田秋生の「海街diary」の待望の4巻が出た。「帰れない ふたり」(小学館)だ。以前にも書いたが、これは吉田秋生の「BANANA FISH」とか「YASHA−夜叉−」のようなヒーローものから家族をテーマにした青春ものへの回帰だ。4巻に記された「あらすじ」から、 …

松屋銀座の「ルパン三世展」を見る〜黒テントのこと〜ル・カレ

松屋銀座の「ルパン三世展」を見た(8月22日まで)。「ルパン三世」はモンキー・パンチによって1967年『漫画アクション』に連載マンガとして始まった。その後1971年にアニメ化される。本展ではマンガの原画、アニメの設定画、セル画、フィギュア、秘蔵資料…

吾妻ひでおの「地を這う魚」を読んで

吾妻ひでおの自伝マンガ「地を這う魚」(角川文庫)を読む。副題が「ひでおの青春日記」とあり、赤羽の印刷工場の工員から漫画家のアシスタントになり、やっと漫画雑誌の付録に短篇を描かせてもらえるようになるまでが描かれている。 吾妻ひでおらしくシュー…

秋月リス「OL進化論」で知ったOLたちの不思議な思考

もう10年以上前になるだろうか。娘が愛読していた秋月リスの4コマ漫画「OL進化論」をときどき見せてもらっていた。OLたちの思いがけない思考が面白かった。それらのなかで今でも一番印象に残っているのは、普段から憧れていた男性より急にデートを誘われた…

南Q太「スロウ」は過激か

南Q太は吉田秋生とともに好きなマンガ家だ。二人とも男みたいな名前だが女性だ。同性愛を取り上げるところも似ている。南Q太「スロウ」(祥伝社)はレズの子が主人公だ。成就することのない切ない愛が描かれるが、内容は18禁だ。智明(ちあき)は高校の後輩…

井伏鱒二とつげ義春の類似性

つげ義春が井伏鱒二の小説を好み、地方へ行ったら井伏の小説のような経験ができるかと思ったと書いていた。今度40年振りに井伏鱒二の「山椒魚」(新潮文庫)を読み直してみたら本当に驚くほど似ている。 まず井伏鱒二の「言葉について」から、 日本海の××島…

山口晃「すゞしろ日記」発行される

山口晃が東京大学出版会のPR誌「UP」にこの7月号で52回も連載している「すゞしろ日記」がまとめられて羽鳥書店から出版された。B5判2,625円。元々はA5判という小さな判型で、その1ページに24コマも詰め込んでいる。でも毎回楽しみなページだ。 過去に2…

「日本人の知らない日本語」が面白い

蛇蔵&海野凪子「日本人の知らない日本語」(メディアファクトリー)が52万部突破だという。日本語学校の先生vs外国人学生の笑える日本語バトルと帯の惹句にある。新聞の広告に紹介されているページが秀逸。 先生 敬語について質問が 「教えて頂けますか」と…

動物は困らないか?

いがらしみきおの「ぼのぼの」第2巻(竹書房、1987年発行)で、ぼのぼのが困る状況が語られる。 ぼのぼの アライグマくん アライグマ あ? ぼのぼの ボクお腹がすいて またこまるかもしれないなァ アライグマ こまりそうになったらサカナを食えばいいじゃね…

吉田秋生「真昼の月ーー海街diary2」

久しぶりに本屋のコミックコーナーを覗いたら吉田秋生「海街dairy」の第2巻「真昼の月」(小学館)が先月発売になっていた。第1巻「蝉時雨のやむ頃」が出たのが昨年の5月で、続編を待ち望んでいた。これは吉田秋生の日常への回帰ともいえるコミック、鎌倉…

高野文子が樹村みのりの影響を受けていた

鶴見俊輔が高野文子と対談をしている! 「考える人」2008年夏号の「対談 幾何学と漫画」だ。高野文子は傑作「絶対安全剃刀」を描いたマンガ家だ。そこに収録されている「田辺のつる」のすごさ! 鶴見 影響を受けた漫画家はいますか。 高野 漫画を描き始めた…

娘との会話

「麻生って人の悪口が多いんだってね」 「父さん、麻生さんは悪口でなくて、失言じゃない。失言は森首相と石原知事も多かったね。毎日2ちゃんに書かれていたよ」 「石原もひどいことを言ってたよね」 「石原さん、三国人て言ったじゃない、あれはひどいよね…

手塚プロの実在した小悪党

もう古い話だから公開してもいいだろう。当時クライアントの要請である商品のイメージキャラクターに鉄腕アトムを契約していた。その頃はまだ鉄腕アトムの著作権を日本テレビが管理していて、交渉はすべて日本テレビと行なっていた。契約して何年目かに手塚…

すずしろ日記

東京大学出版会のPR誌「UP」3月号に山口晃の連載マンガ「すずしろ日記」の第36回が掲載されている。もう連載3年になったのだ。ここで、その言葉のみ拾ってみる。 1. ケータイを持って1年ちょっと。「もしょもしょ」 2. まぁ便利な訳である。今更かくまで…

樹村みのり「見送りの後で」

樹村みのり「見送りの後で」(朝日新聞社)を読む。樹村みのりは昭和24年生まれの漫画家。地味な作風だが家族や社会問題を真剣に描き、センセーショナルなものとも無縁だ。そういう意味では吉田秋生や南Q太とは反対だが、昔から好きな漫画家の一人だ。ヒュー…

安田弘之「ちひろ」を読んだ

「読売新聞読書委員が選ぶ2007年の3冊」に西洋美術史の林道郎が安田弘之「ちひろ 上・下」(秋田書店)を推していることは先日のブログに紹介した。(id:mmpolo:20071224) 「ちひろ」について林は「歌舞伎町の風俗嬢の物語。生々しい描写が多く"R指定"だが…

南Q太という変わった名前の漫画家のこと

南Q太という女性漫画家がいる。20代の一人暮らしの女性の恋なんかを描いている。彼女のマンガから若い女性たちの心理を教わったと思っている。好きな漫画家の一人だ。 でも変わった名前だ。何でこんな名前を付けたのだろうと長年疑問だった。それが不意に分…

吉田秋生「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」がすばらしい

「読売新聞読書委員が選ぶ2007年の3冊」が発表されたが、西洋美術史の林道郎は3冊ともマンガを選んでいる。 山岸涼子「舞姫 テレプシコーラ 1〜10巻」(メディアファクトリー) 吉田秋生「海街diary 1 蝉時雨のやむ頃」(小学館) 安田弘之「ちひろ 上・…

「落第忍者乱太郎」の絵の変遷

「落第忍者乱太郎」略して落乱の連載が始まったのが朝日小学生新聞の1986年1月からだった。もう21年になる。当時ドマイナーなマンガで、それもそのはず作者の尼子騒兵衛の本職はOLで、なぜ自分に連載の仕事が来たのだろうと不思議がっていた。 それがなかな…

子供の頃の印象に残っている文学やマンガ

小学生の頃読んだ本でまだ覚えているシーンがある。子ども向けのアメリカの西部開拓の話で、開拓者の子どもがインディアンの子どもと仲よく遊んでいる。しかしトマフォークを投げての的当てでインディアンの子どもは開拓者の子どもに勝てない。それでひどく…