ヒノギャラリーの多和圭三展「ブ、ツ、シ、ツ」を見る

 東京八丁堀のヒノギャラリーで多和圭三展「ブ、ツ、シ、ツ」が開かれている(6月3日まで)。多和は1952年愛媛県生まれ、1978年日本大学芸術学部美術学科彫刻専攻卒業、1980年日本大学芸術学部芸術研究所修了、2009年多摩美術大学彫刻科教授就任、現在に至る。
 1981年真木画廊で初個展、以来ときわ画廊、田村画廊、ギャラリー現等々で個展を開き、1992年以降はヒノギャラリーで何度も個展を開いている。2010年には目黒区立美術館で大きな個展が開かれた。また各地のグループ展に参加している。2015年のヒノギャラリーでの個展もこのブログに紹介した。
 多和は鉄をひたすら叩いて大きな立方体や直方体の立体を作ってきた。一昨年の個展でも3トンの鉄の立体を展示していた。




 今回は奥の部屋に1点1トンの直方体の作品を2点置いている。大きさはそれぞれ30cm×50cm×86.5cmもある。この2個でひとつの作品だという。つまり2トンの重量だ。いつもの鉄の作品に似ているが、今回は表面が一面錆に覆われている。多和は鉄を叩いて作品を作ってきたから今回のような錆びた作品はなかった。画廊のスタッフに尋ねると、これは廃材を使っているという。製鉄会社の廃材置き場にあったものをそのまま持ってきたという。だから錆びている。ただ、底の面のみを磨いて鏡面状態にしているという。さすがに1トンもある作品はひっくり返して確認することはできないが、側面の最下部に底面の一部が表れている。底と側面の境目にわずかに磨かれている部分が見えている。






 またマケットのような小品が台の上に展示されていて、スタッフが持ち上げて磨かれた底面をみせてくれた。この小品も30kgもあるらしいけど。
 入口近くの部屋には枯木のような作品も置かれていた。これまた廃材を使っている。ただ丸太状の廃材を切ったり溶接したりしている。さらにその形を平面で表現している。もっともこれは絵具で描いているというより錆で作っている。レリーフ状になっているのだ。
 以前の目黒区美術館での個展では1点5トンやそれ以上の巨大な鉄の塊の立体が置かれていた。物体そのものの存在感が作品の大きな要素ともなっているのではないかと思われる。写真で見るだけではなく、実際に作品の前に立って、その存在を体験することが大事だと思う。
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多和圭三展「ブ、ツ、シ、ツ」
2017年5月15日(月)−6月3日(土)
11:00−19:00(土曜17:00まで)日曜・祝日休廊
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ヒノギャラリー
東京都中央区入船2-4-3 マスダビル1階
電話03-3537-1151
http://www.hinogallery.com
JR線・地下鉄日比谷線「八丁堀」駅A2番出口より徒歩5分
地下鉄有楽町線新富町」駅7番出口より徒歩5分