黒田龍之助『その他の外国語 エトセトラ』を読む


 
 黒田龍之助『その他の外国語 エトセトラ』(ちくま文庫)を読む。初めてのエッセイ集の由で、4つの章に分かれていて、「33文字の日常」「22の不仕合せ」「海外旅行会話11の法則」「11年目の実践編」からなっている。
 黒田はロシア語から始めて、ウクライナ語やベラルーシ語、さらにさまざまな言語を学び、大学では英語、ロシア語、言語学を教えていた。NHKテレビやラジオではロシア語の講師もやっている。さまざまな言語をマスターしているようだが、どこにも留学の経験はない。1か月くらいの滞在はしばしばらしいが。
 最初の「33文字の日常」はロシアをはじめ、東ヨーロッパで主に使われているキリル文字を順番に並べて、その文字から始まる単語を見出しにして短いエッセイを組み立てている。その見出しを拾ってみる。見出しはロシア語で書かれているが、私がここに書けないのでその和訳を載せる。英語、文字、電車の車両、新聞、家で・自宅で、もし、クリスマスツリーetc. 脈絡がないようだが、すべてキリル文字のABC順なのだ。
 2番目の「22の不仕合せ」は、正確には外国語学習22の不仕合せで、見出しを拾うと、「英語もできないくせに」「完璧でなければ」「目指すはバイリンガル」「身近なことから」等々となっている。英語もできないのに他の外国語まで手が回らないという学生に、いろいろな外国語を覗いてみようと薦める。完璧を目指す必要はない。バイリンガルを目指さないで多くの外国語を学んだ方がいい。とにかく会話ができるようになりたいから語学を学ぶという人に、誰と話すつもりか、旅行で使いたいと言ってもそんなのはほとんど必要ないなど過激な主張をしている。「悪いことはいいません。やめておきましょう。/店員やウェイター、ホテルのフロント係のために外国語を学ぼうなんて、ヘンです。(……)/相手にニッコリしてもらいたいんだったら簡単です。お金をいっぱい持っていきましょう」。会話より読む力を高めることを薦めている。
 こんな調子だがなかなか面白かった。黒田のほかの著書もよんでみたい。