「あたらしい短歌、ここにあります」

 雑誌『ユリイカ』8月号は「特集・あたらしい短歌、ここにあります」だ。新作5首として、16人の人たちが5首ずつ短歌を寄せている。ほかに雪舟えまは10首をイラストともに提出している。
 5首ずつ寄せた16人の名前を挙げると、俵万智巻上公一戸川純斉藤斎藤、瀬戸夏子、結埼剛、井上敏樹福永信、木下古栗、ミムラ壇蜜DARTHREIDER a.k.a.Rei Wordup、澤部渡雨宮まみルネッサンス吉田、木下龍也・尾崎世界観。最後の木下と尾崎は連名で10首を書いている。
 雪舟と併せて95首になる。その中からいくつか・・・

牧草ロールは真面目で可愛い君のよう野にいて星を宿したつもり   雪舟えま
足乳ねの母より足れし我が乳を憂きつ嘆きつ五十路をば往く   戸川純
腋毛剃る乙女のように片腕を意味もなく上げまた下げる夜   木下古栗
水色のシャツ真ん中に堂々とトマトの色染み好奇の踏切   ミムラ
月に住めば見上げる月のない日々を詩にするだろうぼくの孤独は   木下龍也

 どうもどれも感心しない。対談がひとつ、穂村弘と最果たひ。これもあまり面白くなかった。岡井隆東直子が聞き手となってインタビューしているが、これが一番読み応えがあった。岡井の言葉を引く。

岡井  レトロなものがかえって新しい、深い、おもしろいということはいくらでもある。人間の身体というのは、身長が2メートルにはなかなかいかない、昔から5尺、6尺くらいですし、内臓の状態もなにも変わらない。いくらなにかが進歩しても、食べるときは歯で噛んで胃で消化して、腸にもっていくというのは変わらないわけでしょう。これが時代とともにどんどん大きくなっていくことも小さくなっていくこともない。そうすると、普遍的な、永遠的な要素とどんどん変わっていくものの両方がある。季語もなにも僕らが残すという意識をもたなくても残っていくだろうし、そういう意味では短歌も俳句も続いていくんですよね。芭蕉の言う「不易流行」ですね。

 穂村弘の短歌を見て、何だ面白くつくればいいのかとニューウェーブ短歌が生まれてきたのだろうか。どうもあまり評価できない。
 鳥居の第1歌集『キリンの子 鳥居歌集』が評判になっているらしい。予約注文だけで品切れになったという。母の自殺や養護施設での虐待などが詠まれているらしい。桝野浩一の第3歌集『ますの。』も面白そうだ。この辺りを読んでみよう。
 なにも新しい短歌がつまらないと言うつもりはない。以前読んだ『新・百人一首』は大変おもしろかった。


『新・百人一首』を読む(2013年4月2日)