ブコウスキー『パルプ』を読む

 チャールズ・ブコウスキー『パルプ』(ちくま文庫)を読む。ブコウスキーを読むのは初めてだった。『町でいちばんの美女』の題名だけは知っているという程度。いつかは読みたいと思っていた。
 本書はミステリ仕立て、主人公が私立探偵ニック・ビレーンだ。ところが鼻っからの依頼が、とうに亡くなっているセリーヌを探してほしいというものだった。セリーヌは死にましたよと答える探偵に、依頼人セリーヌは生きているのよ! と、セリーヌが生きていることの確証を要求する。
 ほかに赤い雀をさがしてくれ、女房の浮気を調査してくれ、などの依頼が舞い込む。調査の途中、カーラジオのスイッチを入れると、突然依頼人からの連絡が流れる。ラジオを自動車電話のように使っている。原著の発行をみたら1994年だった。
 ついに宇宙人のすごい美女にマインドコントロールされているという依頼人まで現れる。ところがこの宇宙人が本物だった。地球征服を企んでいるという美人の宇宙人は、本当は蛇のような存在で、自由に姿を変えることができるし、超能力も持っている。
 そんなハチャメチャなストーリーが進行していく。題名の『パルプ』とは、20世紀前半にアメリカで流行した安っぽい紙を使った大衆小説のことを指すらしい。だから本書は荒唐無稽な大衆小説のつくりを模しているのだろう。
 内容の支離滅裂さや荒唐無稽さに驚きながら読んだが、それなりにおもしろかった。今度『町でいちばんの美女』を読んでみよう。


パルプ (ちくま文庫)

パルプ (ちくま文庫)