ギャラリー58の小鶴幸一展「−グリッド・コンポジション−」を見る

 東京銀座のギャラリー58で小鶴幸一展「−グリッド・コンポジション−」が開かれている(9月10日まで)。小鶴は1948年、福岡県生まれ。1972年武蔵野美術大学油画科を卒業し、1974年渡仏し、パリ国立美術大学に留学している。
 小鶴の作品は矩形に黒枠で型取り、2色ないし3色の色面を置いている。白と緑とか、白と緑と青とか、白と茶とか。一見モンドリアンを思い出させる。しかし、小鶴はそう思わせておいて見る者を裏切るのだ。ある種のだまし絵を思わせる。僕はだますつもりはないよと小鶴は言う。
 ゲシュタルト心理学に、図と地という概念がある。図の下には自動的に地が生まれる。人間はそのように見るのだ。白い紙に線が引かれていれば、線が図で白い紙が地となる。図の下には途切れることなく地があるように人は思う。




 さて、小鶴の作品は黒い枠があり、そこに緑や青、茶の矩形が置かれている。一見すると、黒い枠とともに、緑や青の矩形も図に見える。ところが白と緑の作品でいえば、緑は枠の上と右にはみ出している。白と緑と青の作品では、右上の緑には枠線が省かれている。そのことに気づくと、図に見えていた緑が突然地に変わるのだ。図だと思っていたものが地になる。だまし絵だという所以だ。
 白と茶の作品では、茶が黒い枠を消している。このとき、黒い枠と茶は図になり、白が地になる。
 青い縦長の作品では左側に格子状の黒枠が描かれている。この作品を下方から見ていくと、立体を描いていると思っていたのに、構造が地に溶け込んで分からなくなる。面白い作品だと思う。
 小鶴がだますつもりはないと言っているのは、以上述べたことを自覚してやっているわけではないからだろう。小鶴はただ優れた感覚で興味深い作品を完成させたに違いない。
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小鶴幸一展「−グリッド・コンポジション−」
2016年9月5日(月)−9月10日(土)
12:00−19:00(最終日17:00まで)
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ギャラリー58
東京都中央区銀座4−4‐13 琉映ビル4F
電話03-3561-9177
http://www.gallery-58.com