枡野浩一短歌集『ますの。』を読む

 枡野浩一短歌集『ますの。』(実業之日本社)を読む。1968年生まれの枡野が1999年に出版した短歌集。当時枡野は31歳くらいか、若いニューウェーブ歌人の一人のようだ。
 しかし本を開いて驚いた。レイアウトに品がないのだ。

 このように見開き2ページに短歌がたった1首、太ゴジの大きな活字で組まれている。こんな品のないレイアウトを担当したのは「装幀 祖父江慎」と奥付に印刷されているのでこの人なのだろう。出版社も責任があるはずだ。
 190ページほどあるのに、短歌はたった88首しか載っていない。並行して読んでいる『桜前線開架宣言』という歌集なら7ページ未満で終わってしまう分量だ。
 内容を見てみる。

正しいハメ方はこうじゃないような気がする 何度やりなおしても


「よかった?」と質問してもいないのに「よくなかった」と答えてくれる


少女らにウケるバンドのライブでは男子トイレがすいていて楽


塩酸をうすめたのが希塩酸ならば希望はうすめた望み


イヤホンは耳をふさいで考えが生まれることを防ぐ避妊具

 最初の「ハメ方」って性交のことだろうか。次の「よかった?」も性交のあとの話みたいだ。昔知っていた女性が「私、初めて寝た男性には上手ねえって言ってあげるの」って言っていたことを思いだした。私は言ってもらえなかった。下手なんじゃなくて寝なかったから。
 枡野は『Weeklyぴあ』の「はみだしYouとPia」に投稿していて常連だったらしい。同じ号に私と一緒に掲載されていたことがあったかもしれない。


ますの。―枡野浩一短歌集

ますの。―枡野浩一短歌集