スタニスワフ・レムの凄さ!

 スタニスワフ・レム『火星からの来訪者』(国書刊行会)について、若島正毎日新聞に紹介している((2023年5月13日)。本書の副題が「知られざるレム初期作品集」というもので、「レム・コレクション」の第2期の1冊だ、その書評から、 

 レムの実質的なデビュー作である、長めの中篇サイズの「火星からの来訪者」は、火星からのロケットが飛来して、そこに搭載されていた「火星人」を科学者たちのチームがなんとか理解し、意思疎通を試みようとする姿を描いている。いわゆるファースト・コンタクト物として典型的な作品だが、後にレムがH・G・ウェルズの『宇宙戦争』論を書いたときに指摘した問題が、すでにこの若書きの作品にも書き込まれていることに気づかざるをえない。たとえば、レムは火星人を「非常に非人間的でかつ機能的に描かなければならない」として、「機械と生命体の合体」をモデルとして考えたが、「火星からの来訪者」で描かれている、「アレアンロプス」と名付けられた火星人は、「何やら黒く青く光る不格好な機械」としか見えない。『ソラリス』へとつながる、人間の理解を越えた異なるものの存在というテーマは、こと異星人に限らず、「人間が考え出したことすべて」を忘れることで永久機関を発明してしまった少年を描く短篇「異質」にも通底している。

 

 もうこれだけでレムの際立ったユニークさ、凄さが分かるというものだ。レムのSFを知ったら、他のSFはほとんど読むに堪えない児戯に等しいとまで言い得るだろう。