鈴木江理子・児玉晃一編著『入管問題とは何か』の書評

 鈴木江理子・児玉晃一編著『入管問題とは何か』(明石書店)を中島京子が書評している(毎日新聞2022年9月17日付)。その内容が凄まじい。

 

……いったい「入管問題」の本質はなんなのか。

編者の一人の鈴木江理子は、「暴力性」と書く。

 「収監の可否判断に司法は関与せず、入管職員の裁量によって、無期限の習慣が可能である」施設。その対象になるのが「外国人」で「日本にいるべきではない不法な人間」とされるために、「関係者や監督者の責任が追及されることなく、やり過ごされて」きた。

 

 3章の高橋徹による「入管で何が起きていたのか」の記述は、読む者の胸を抉る。たった20年ほど前の入管の人権侵害ぶりは凄まじい。文字通り、殴る蹴るの暴力が日常化し、職員による被収容者のレイプまで行われていた。

 

4章ではクルド難民の支援に携わる周香織が、自らの活動を振り返る。国連難民高等弁務官事務所が正式に認めた「マンデート難民」であるにもかかわらず、日本の入管がクルド人親子を強制収容し、支援者や弁護士らが抗議の記者会見を開いている只中に、チャーター機でトルコに強制送還した、日本の入管史上特筆ものの、人権侵害事件が詳述される。

 

 差別を、「暴力性」を、制度の中に持っている以上、日本人はほんとうの意味では「人権」を知らない。「入管問題」とは、この事実と向き合うことだ。わたしたちは、まず、この認識から出発すべきではないかと感じた。

 

 

 きわめて重い事実を指摘された。