ふりむくと、未来が見える。



 六本木の東京メトロの駅の壁に某テレビ局のポスターが貼られていた。「ものづくり日本の奇跡」という某テレビ局60周年特別企画の番組の広告で、「ふりむくと、未来が見える。」というヘッドコピーが書かれている。そのボディーコピーが、

焼け野原で、先人たちは夢を見た。
もういちど立ち上がる夢だった。
何もなかった。
夢だけをむさぼった。
夢は未来だった。
未来はつくるしかなかった。
汗と涙を、知恵と勇気を、涸れるほどしぼった。
やがて、プロダクトで、テクノロジーで、アイデアで、遠く描いた未来に手が届いた。
焼けるような魂に触れながら、いま、私たち自身に問いかけよう。
むさぼるように夢を見ているか。
つくれるか。
歴史が嫉妬するほどの未来を。
21世紀は、もう、15年目だ。

 何だか、S酒造メーカーが新成人向けに毎年4月1日に新聞に掲載している某作家の書くコピーのようだ。気負っているところとちょっと臭いところ、言葉が垢抜けないところなどがほんの少しばかり似ている。S酒造メーカーのその広告は以前は江分利満氏が書いていたけど氏が亡くなって、それからこの作家に代わったのだった。江分利満氏の方が良かったと思うけど……。
「焼け野原で、先人たちは夢を見た。もういちど立ち上がる夢だった。何もなかった。夢だけをむさぼった。夢は未来だった。未来はつくるしかなかった。汗と涙を、知恵と勇気を、涸れるほどしぼった」。
 これって、実体がなくて単に言葉を弄んでいるだけじゃないか。こんな臭いコピーにオーケーを出してはいけないでしょう。