コバヤシ画廊の坂本太郎展を見る

 東京銀座のコバヤシ画廊で坂本太郎展が開かれている(4月11日まで)。坂本太郎は1970年、埼玉県生まれ、2000年に愛知県立芸術大学大学院修士課程を修了している。都内では2000年に当時早稲田にあったガルリSOL、2001年以降銀座のフタバ画廊や小野画廊、ギャラリーアートポイント、ギャラリー山口などで毎年個展を続けてきた。コバヤシ画廊では一昨年に続いて1年半ぶり、3回目の個展となる。いずれも大きな木彫作品を展示してきた。
 画廊の扉を開けて驚いた。目の前に大きな作品が設置されている。ここ何回か屹立するような上に伸びる作品を発表してきたから、今回もそれを予期していたのだろう。予期は裏切られ、床に長く横たわる大きな作品だった。最初は馬の頭部かと思ったが、よく見れば馬ではない。鯨かとも思えたが、それも違う。右端がカモノハシの口を連想もさせる。右に回って見たとき一瞬、舟かとも思った。





 今回展示された作品は、具体的な形象を表していない。にも関わらず、無機的に見る者を拒否するのではなく、なにか親しげな形を見せている。表面にはノミ跡が刻まれており、どこか動物の形態を思わせる形象を示している。
 大きさは左右3メートルを超えていて、高さも幅も1メートル前後ある。10個の部分から成っていて、それを大きなボルトとナットで止めている。そのボルトとナットも作品の大きな要素となっていて、作品の表情に変化をつけている。全体で300キログラム強、ムクではなく中空の構造だ。
 坂本は象の頭部を制作した初期の具象的な形態から、ギャラリー山口での個展以来抽象的な作風に変化してきた。その抽象的な形態が、先にも述べたように無機的な抽象ではなく、どこか具象的なイメージに繋がっているような親しみを憶える形に仕上がっている。そして坂本の作る作品の完成度が毎回高まっている。
 あらためて坂本の作品をよく見れば不思議な形をしている。これがなぜこんなに気持ちよく感じられるのだろう。
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坂本太郎展「Voice」
2015年4月6日(月)−4月11日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1F
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/