ジョゼフ・コーネルの箱の作品の意味するもの

 ジョゼフ・コーネルは箱を作品としている美術家だ。川村記念美術館にも作品が収蔵してあり、そのホームページでコーネルについて読むことができる。

アメリカ生まれのジョゼフ・コーネル(1903-1972)は、「箱のアーティスト」として知られています。1931年にエルンストやダリなどのシュルレアリスム芸術に感化され、自らコラージュなどを制作したあと、彼が生涯を通じて作り続けたのは、両手で抱えられるほどの大きさの手作りの箱にお気に入りの品々をしまい込んだ作品でした。それらはコーネル自身にとっての宝箱であると同時に、彼独自の世界観を披露するショーケースであったといえます。
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専門店で見つけた蝶や虫の標本が図鑑から切り抜かれた仲間たちと戯れ、その様子を二羽のオウムが隣でじっと眺める《無題(オウムと蝶の住まい)》は、博物館の陳列棚のように整然として見えます。しかし見方を変えれば金網で仕切られ、捕虫網が壁に掛かったこの小屋に棲息するオウムと蝶は、異国に憧れを抱きながらも、母と弟の面倒をみるため、住まいのあるニューヨークから一生離れられなかったコーネルの姿とも重ねることもできるのです。
http://kawamura-museum.dic.co.jp/collection/joseph_cornell.html

 コーネルはまた草間弥生の良きパートナーでもあった。草間はおそらく少女期の性的トラウマを抱えているために、初期からずっとペニスに対する強迫神経症的な作品を作り続けていて、男性的なものに対して強い嫌悪感を示しているように見える。その草間にとってコーネルはきわめて優しい男性として現れたようだ。草間はコーネルの死後日本へ帰国するが、体調を崩して入院した。
 さてコーネルは草間に優しかったが、一方で激しいマザコンでもあったという。すると、コーネルの箱は彼の母親ではなかったか。夢判断では、夢に現れた部屋は女だという。箱は部屋に通じるのではないだろうか。
 私も部屋の夢を繰り返し見たことがあった。長い間見捨てて帰らなかった自分のアパートとか寮の部屋へ久しぶりで帰ると、見知らぬ他人に占領されていたり、大家が荷物を運び出しているという夢だった。夢に現れた部屋は女だと聞いたとき、すぐその女は母を表わしているのだろうと分かった。20歳で上京して以来、田舎に母を置き去りにしてきたという普段意識することのない深いコンプレックスがあったのだろう。繰り返し部屋を夢に見た理由はそれだったろう。
 コーネルの箱が彼の母であることはおそらく間違っていないだろうと思う。
 しかし、さて、冷静になって考えてみれば、「コーネルはマザコン」「コーネルは箱の美術品を作っている」「夢に現れた部屋は女性」という三題噺からなぜそのような結論が得られるのか。美術家が作る作品は意識的に作るのではない、そういう意味では箱庭療法と共通するものがあるだろう。だとすると、美術家の作る作品は彼の無意識が作らせるものではないのか。それは夢に限りなく近いだろう。コーネルが箱の作品を作っているなら、その箱は女性と深く関係があるに違いない。それなら箱は母親なのだろう。
 もう一度言おう、コーネルの箱が彼の母であることはおそらく間違っていないだろう。