岡本太郎美術館の池田龍雄展「アヴァンギャルドの軌跡」とモートン・フェルドマン


 川崎市生田緑地にある岡本太郎美術館池田龍雄展「アヴァンギャルドの軌跡」が開かれている(1月9日まで)。
 池田龍雄は1928年生まれ、終戦間際に予科練へ行っている。岡本太郎美術館へは初めて行った。小田急向ヶ丘遊園駅から公式には徒歩17分とある。生田緑地の奥の方にあって、生田緑地も広いが岡本太郎美術館もびっくりするほど広かった。池田龍雄の絵はあちこちで少しずつ見てきたが、まとめてみると印象が変わった。今まで晩年の様式的に洗練された小品を見ることが多かったが、初期の想像力豊かなシュールレアリスム的な作品が何と言っても面白かった。中村宏らとやっていたルポルタージュ絵画も良い。さまざまな手法を試みている。
 岡本太郎美術館だから岡本太郎の常設展示も見られる。私が岡本太郎で一番好きな作品「痛ましき腕」も展示されている。同じ美術館で池田龍雄の作品と岡本太郎の「痛ましき腕」が同時に見られるのは意味があることなのだ。この作品は岡本がパリで描いて、そのままパリに置いてきたのだったか、持ち帰って空襲で焼けたのだったか、戦後求められて展示したいとき作品がなかった。当時病気で寝ていた岡本は、池田龍雄桂太郎にわずかに残った小さな白黒写真から再制作することを依頼する。二人が写真に方眼を書き、それを基にキャンバスに大きく線画の下絵を描いた。それに岡本が着彩してこの絵が完成したのだった。これは池田龍雄が協力して出来上がった再制作なのだ。

岡本太郎「痛ましき腕」
岡本太郎の「痛ましき腕」(2006年8月24日)
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 先日、東京オペラシティリサイタルホールで高橋アキ ピアノリサイタル「Aki plays Feldman」を聴いた。プログラムの中心はモートン・フェルドマンの「バニータ・マーカスのために」というピアノ・ソロで、1楽章が85分という現代音楽だった。ほとんど抑揚のない淡々としたピアノの音がいつまでも続いていく。ピアニストも暗譜しづらいようで、丁寧に楽譜を追っている。これは1985年に作曲された曲で、Wikipediaによれば、「80年代以降は、彼(フェルドマン)は一つの楽章で所要時間が60分以上、なおかつ音楽全体がピアニシモのままという、非常に長大な作品を作曲し始めた」。そのリサイタルで私の席のすぐ近くに池田さんが座っていた。この年齢で(失礼)、こんな大変な現代音楽を聴かれるのだ! と強く印象に残ったのだった。
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池田龍雄展「アヴァンギャルドの軌跡」
2010年10月9日(土)〜2011年1月10日(月)
(12月29日〜1月3日休館)
9:30〜17:00(入場は16:30まで)
入場料:800円、高大学生・65歳以上:600円、中学生以下:無料
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岡本太郎美術館
川崎市多摩区枡形7-1-5 生田緑地内
電話044-900-9898
http://www.taromuseum.jp