円満字二郎『漢和辞典的に申しますと。』を読む

 円満字二郎漢和辞典的に申しますと。』(文春文庫)を読む。円満字は出版社で国語教科書や漢和辞典の編集者として働いていた。本書では160の漢字を取り上げて、それぞれ見開き2ページでコラムのように解説している。これが意外におもしろかった。私も漢字に関してはそこそこ知っているつもりでいたが、円満字に比べれば実に文字通り児戯に類する程度だった。恥ずかしい。
 「盆」について、「覆水、盆に返らず」という諺があるが、盆といえばお皿やコップを載せて運ぶもの。あんな底の浅いものに水を入れたりしたらこぼれてしまうのも当たり前と著者はいう。この盆というのは、私たちが知っている盆ではない。盆とは本来洗面器のような「ある程度の深さがある、丸い容器を意味する漢字」だという。平たい「おぼん」のことを意味するようになったのは日本で変化して生まれた用法なのだと。
 こんな風にチョー専門的な話題がやさしく面白く語られている。見開き2ページで完結しているので、どこから読んでも構わない。電車の中とかトイレとかちょっとした時間で読めるので、おすすめです。