山本弘の作品解説(72)「緑の家(仮題)」


 山本弘「緑の家(仮題)」、油彩、F4号(33.5cm×24.5cm)
 制作年不明。少し遠くの左上に小さな一軒家が描かれている。ヘの字型の屋根が黒く描かれ、家の本体はモスグリーンの絵具がパレットナイフで厚塗りされている。全体にベージュ系の色が塗られ、家の右手側に家に響き合うようにサラッと葱色が置かれている。
 ベージュ系と書いた色は白や焦茶色が混ぜられていて、複雑な色彩になっている。その色合いとパレットナイフの筆触だけで出来上がっているような作品だ。それがたとえようもなく美しい。F4号の小品だが、絶品と言ってもいいのではないか。
 1978年10月の最後の個展には出品されていなかったので、それ以後に描かれたものか、あるいはもう少し前だったのか。いずれにしろ、作風から最晩年の作品には間違いない。こんなに素早く自由に描いてそれが傑作になるのだった。


※「一軒家」を「緑の家」に変更した。