山本弘祥月命日

 今日715日は山本弘の祥月命日だ。山本弘39年前1981年の今日51歳で亡くなった。亡くなる前の1976年、77年、78年の3年間に4回の個展を開き200点以上の油彩を展示した。誰からも評価されず絵もほとんど売れなかった。そんな中で体調も崩していながらただただ描き続けた晩年だった。そのことが自分の作品を信じて描き続けたことを表している。その自信は今から見ればすごく真っ当なものだった。山本の命日に際して小品ながらその傑作を提示したい。

 

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 山本弘「緑の家(仮題)」、油彩、F4号(33.5cm×24.5cm

 制作年不明。少し遠くの左上に小さな一軒家が描かれている。ヘの字型の屋根が黒く描かれ、家の本体はモスグリーンの絵具がパレットナイフで厚塗りされている。全体にベージュ系の色が塗られ、家の右手側に家に響き合うようにサラッと葱色が置かれている。

 よく見れば右側に男の姿が描かれているのが分かる。男は緑の家を遠くから見つめているのだろう。家は家庭の団欒を象徴しているようだ。男は遠くからそれを羨望している。しかしアル中に苦しむ男にそれは疎外されている。

 そんな大胆な想像が可能なのは、同一構図、同一主題の10号の作品「窓」があるからだ。「窓」はもっと具体的に夕闇の中に窓が白く明るんでいる。男がやはり外に一人で立っている。

 作品のテーマはそのようだが、そのことを離れても造形的にも素晴らしい。パレットナイフを使って、下に塗った絵具が乾かないうちに別の色を塗り重ね、混色した色がなんとも言えない美しい色を産んでいる。家が分厚い緑の絵具で塗られ、周囲は家に比べて薄塗りになっている。これはフォートリエに学んだものだろう。

 小品ながら傑作、代表作の一つと言えるのではないか。

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山本弘の作品解説(74「窓」

https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20180605/1528193334