星新一『ボッコちゃん』を読んで

 星新一『ボッコちゃん』(新潮文庫)を読む。1971年に初版が発行されて以来、私が購入した昨年8月発行のものですでに109刷りを重ねている。すごい人気だ!
 星新一を読んだのは高校生のころで、面白いとは思ったものの、以来手に取ったことはなかった。今回読んだのは、毎日新聞に書評が紹介されていたからだ(12月3日=小佐田定雄)。

 ショートショートといえば星新一。(中略)これまで何十回となく読み返している。それでも全く飽きることはないし、ときには全く新しい発見をすることもある。
 中に収められている「おーい でてこい」は都会から離れていない村のはずれに直径1メートルくらいの穴が開いたところから話が始まる。その穴はたいそう深く、若者のひとりが底に向かって「おーい でてこい」と叫び、小石をひとつ投げ落としてみる。なんの反応もないので、人間たちは原子炉のカスをはじめとするあらゆる種類の廃棄物をその穴に棄てはじめる。この穴に汚いものをすべて捨てることで、人類は美しくて住みやすい環境を手に入れるのだが……というストーリー。ラストにはおそろしいオチが待っている。

 まさに「おーい でてこい」はわずか7ページの短いものだが、傑作だと思う。星の優れた批判精神がいかんなく発揮されている。これは自選短篇集で50篇が収録されているが、しかし傑作がそんなに多いわけではない。またショートショートという形式はアイデアを十分に練り上げるのに適したものとは言い難い。星の優れたアイデアが乱費されていると言う印象を拭い難い。
 星の他の作品も読んでいこうという気はあまり起こらないのだった。



ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)