若松英輔『詩集 幸福論』と『詩集 燃える水滴』(どちらも亜紀書房)を読む。荒川洋治が『霧中の読書』(みすず書房)で若松の詩について、「素朴なのはいいが、ものの見方がすこぶる単純。ほんとうはあまりものを考えない人なのではないかと思った」と書いていた。それで自分でも検証してみたかった。
若松英輔「多忙な人」
忙しすぎては いけない
大切な人に
会えなくなって
ひとりで困っているのを
見過ごしてしまう
忙しそうに していると
心を 開いてくれるはずの人が
いつの間にか
黙ってしまう
そんなことがあったら
どんことを
成し遂げたとしても
虚しく感じることだろう
世の中が
仕事と呼ぶものに
心を
奪われては いけない
荒川の言うように、素朴でものの見方が単純な詩だ。修辞も単調で、とてもまともな出版社が発行したとは思えない。自費出版のレベルではないか。おそらく若松が批評家、随筆家として有名で、様々な文学賞なども受賞しているので、出版社としてはそこそこの売り上げが期待できたのだろう。詩を読む限り思考も深くはなさそうだ。