ギャラリイKの戸張花展を見る

 東京京橋のギャラリイKで戸張花展が開かれている(11月25日まで)。これは毎年恒例の多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻生選抜プロジェクトで、例年2人が選ばれてギャラリイKで2週間ずつ個展をする機会が与えられる。選ばれた優秀な学生の個展ということになる。
 戸張花は1993年東京都出身、2016年に多摩美術大学美術学部彫刻学科を卒業し、現在同大学大学院美術研究科彫刻専攻に在学中。今までグループ展には何度も参加しているが個展は初めてとなる。




 最初DMはがきを見て工芸なのかと思ってあまり期待しないで行った。その井戸茶碗みたいだと思った作品がすごく大きな鉄製だった。表面はごつごつしていてとても武骨な印象だ。画廊の宇留野さんと見ているうちに作家が現れた。碗型の作品は直径1160cm、重さは250kgもある。製法を聞いて驚いた。細い鉄棒を溶かしながら少しずつ垂らしていって1年間かけて製型しているという。技法は何ですかと訊くと溶接ですとの答え。溶接という製法は初めて聞いた。だから表面がごつごつしているのだ。つまり垂れた鉄が冷えて固まったままの形なのだ。よくこんなにきれいな円になりますねと言うと、私は彫刻家ですからと答えた。お見事! 先生は誰かとの問いに多和圭三と言われて納得する。多和は目黒区美術館の個展で5トンとか6トンとかのむくの鉄の立方体を出品していた。戸張の書いたテキストが壁に貼られていた。

私は多くの時間と、果てしない作業量の蓄積によって一つの作品を完成させます。/鉄は時間と共に錆び、朽ちて、熱によってその姿を変えていきます。/まるで生きているように形を変え、私の思い通りに動くことはありません。/一つ一つの鉄の粒が固まって一つの塊になっていく時、生命体や自然物が一つ一つの細胞や組織から存在していることを感じ、”私は今「もの」を作っている”という確かな確信が生まれるのです。



 もう一つの作品は四角い箱のような形状だが製法は一緒だ。左右1600cm、重さは350kgある。
 いずれも戸張の書くように、膨大な鉄の粒の集積であり、毎日ひたすら溶かした鉄を垂らして溶接するというこれまた膨大な作業時間の蓄積だ。これは凝縮された鉄の質量と費やした時間の実体化したものなのだ。見事というほかない。奥には2週間で作ったという小品(重量30kg)も置かれていた。
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戸張花展
2017年11月13日(月)―11月25日(土)
11:30−19:00(土曜は17:00まで)日曜休廊
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ギャラリイK
東京都中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4F
電話03-3563-4578
http://galleryk.la.coocan.jp/