コバヤシ画廊の西成田洋子展「記憶の領域2017」を見て

 東京銀座のコバヤシ画廊で西成田洋子展「記憶の領域2017」が開かれている(11月18日まで)。西成田は1953年茨城県生まれ、1987年より東京、水戸、ニューヨークなどでもう30回以上も個展を開いている。作品は大きな奇妙な立体で、古着などを縫い合わせて造形している。




 ここ何年かは床に寝かせたような形だったが、今回は足のようなものがあって久しぶりに立像のようだ。立像だとすればシルエットは人のようにも見える。だが間近に見ればあるいはモンスターのように、フランケンシュタインのように、またゾンビのようにおぞましく思われるかもしれない。日本画の花鳥風月を美しいと定義すれば西成田の造形はむしろ醜いと言い得るだろう。
 だが見慣れてくると一見汚いとも見える抽象画が実は美しいように、見つめていると醜いと思っていた西成田の立体が美しい造形に変わることを経験する。あたかも観音像のように、聖性を帯びているかのように見えてくる。らい病を病んでいた乞食が光明皇后の介護によって阿閦(あしゅく)如来に変わる一瞬を再現しているかのようだ。

 床に置かれた立体は、これまた何か別の存在のようだ。皮ベルトを巻いた形が大きな眼を連想させて、人でも動物でもない不思議な生命のように思われる。そんなことを書きながら、西成田が何か生きもののようなものを作っているのではないことは理解できる。彼女はひたすら抽象的なというべき造形をしているのだ。それが見る者に上述のような連想を起こさせる。ひとえにその造形の完成度の高さによるものなのだ。
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西成田洋子展「記憶の領域2017」
2017年11月13日(月)−11月18日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
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コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/