橋爪大三郎『戦争の社会学』を読む

 橋爪大三郎『戦争の社会学』(光文社未来ライブラリー)を読む。副題が「はじめての軍事・戦争入門」。橋爪大三郎東京工業大学で行った「軍事社会学」の講義を書籍化したもの。「はじめに」から、

 戦前には、軍があった。軍は、国民のためではなく天皇のため、いや、天皇のためと言いながら実は軍自身のために、存在した。人びとは軍について、十分な議論ができなかった。だから、愚かな戦争を、止めることができなかった。戦後は、軍がなくなった。でもやっぱり、戦争と軍について十分な議論ができていない。それなら、戦争や軍の本質がわかっていないという点で、戦前も戦後も変わりがないではないか。

 だからこそ、軍事社会学である。

 

  戦争社会学は戦争概論である。個々の歴史的戦争ではなく、時代ごとの戦争一般を解説している。古代の戦争、中世の戦争、火薬革命。そしてグロチウス戦争論クラウゼヴィッツ戦争論、マハンの海戦論が紹介される。

 プロイセンの参謀モルトケはその戦略によって普仏戦争に勝利する。第1次大戦後のイギリスのリデル・ハートは間接戦略アプローチを唱える。それは軍事決戦万能論に反対するものだった。諜報戦が重視される。

 第2次世界大戦と原爆開発が語られ、次いで日本軍の特殊な軍人勅諭が分析される。軍人勅諭憲法に先立って作られた。また高級指揮官のみが見られる『統帥綱領』は終戦時にすべて焼却されたが、後に記憶をもとに再現された。そこには国際法で禁じられていた戦闘において毒ガスを使用することがはっきり書かれていた。

 最後にゲリラとテロの違いが指摘される。

 戦争に関して知らないことばかりだった。極めて有益な読書だった。