原田眞人・聞き手の『黒澤明語る』(ベネッセ)を読む。1991年1月と6月の2回、原田が黒澤にインタビューしている。原田も映画監督で、『突入せよ!あさま山荘事件』などを監督している。
さて読み始めると原田が映画監督のせいか細かいエピソードへのこだわりが強く、対談の頃公開された映画『八月の狂詩曲(ラプソディー)』について「ボレロ」が聞こえてきたとか、出演者の大寳智子の演技とか、そんなことにこだわって大局的な話にならない。集会所前の畑は春から種を蒔いたのか聞いている。黒澤があれは稲ですなんて答えている。
全体に細部に対する原田の強いこだわりがあって、対談内容があまり面白くない。役者の演技が偶然だったのかとか演出だったのかとか、演出家以外にあまり関心が湧かないところに原田はこだわる。
2回のインタビューのあと、原田の「クロサワ・クロニカル/またはいかにして私はクロサワ・ワールドに足を踏み入れたか?」という章があり、原田は10歳前後に黒澤の『隠し砦の三悪人』を見ているという。それから原田の黒澤体験が延々と語られる。これが最も面白くない。
原田の監督作品は25本もあるようだが、いずれも見ることはないだろう。