蓮實重彦『ゴダール革命』を読む

 蓮實重彦ゴダール革命』(ちくま学芸文庫)を読む。蓮實がゴダールについて書いた論文を集めている。『勝手にしやがれ』から遺作『イメージの本』まで、ゴダールの作品を網羅した評論集だ。

 蓮實重彦の批評は表層批評というらしい。作品の内容にはほとんど触れることなく、『気違いピエロ』の「フェルディナンが無意識に希求する海は南になければならず、海辺の光景は空と水の青さを裸の色彩そのものに還元しうるものでなければならず、またその水が、彼の存在を最終的には拒絶するものでもなければならない。そうした意味からすると、トリュフォーが提供したシナリオの段階では北の海に面した霧と曇天の港ル・アーブルに起点を持つはずになっていた『勝手にしやがれ』の物語が、ゴダールによって陽光のみなぎる地中海岸のマルセイユへと移し替えられた事実は、きわめて重要だとみなければなるまい」と、こんな調子が最後まで続く。

 そしてすべての作品について同じように表層を語っているから、作品ごとの違いは少なく、同じような言葉が続いていく。

 本書は381ページもあり、つくづく読むのが退屈で苦痛でもあった。昔蓮見重彦の『大江健三郎論』を読んで懲りていたのに、そのことを忘れて読んでしまった私がばかだった。