篠田正浩監督『乾いた花』を見る

 京橋の国立映画アーカイブ篠田正浩監督『乾いた花』を見る。主演が池辺良、相手役が加賀まりこ、原作が石原慎太郎。見終わって原作を50年ぶりに読む。

 映画は面白かった。さすがは篠田正浩監督だ。インテリヤクザの話、映画も原作もインテリヤクザとは言っていないが、思考が単なるやくざではなくインテリのものだ。

 賭場が重要な舞台になる。殺人の刑期を終えて出てきた池辺良がさっそく賭場へ顔を出し、大金を賭けている素人っぽい16、7の娘に会う。加賀まりこが演じている。この年齢は原作にある。てことは女子高生の年齢だ。

 賭場で知り合った池辺に加賀はもっと大金が動く賭場に行きたいと頼む。池辺もその筋の知り合いに頼んで大きな金が動く賭場へ加賀を連れていく。それまでバッタと呼ばれている単純な賭けから、そこでは手本引きという博打に移る。難しい賭けなので池辺は心配するが、加賀は「いい、何とかやってみるから」と言って賭けに参加する。周りが危うんでいる中で加賀は上手にこなしていく。

 手本引きについては原作にそのルールが紹介されているがこれが難しい。小娘にこれがマスターできて玄人衆相手に互角に勝負できるとは思えない。プロ棋士先崎学九段が『小博打のススメ』(新潮新書)に書いている。博打の最高傑作という手本引き、この手本引きが現在裏社会ですら行われなくなったのは、裏社会中の裏社会、つまり「その筋のヒト」御用達のゲームだったからだという。またWikipediaにも詳しいルールが載っている。

 映画そのものは面白く集中してみることができた。ただ原作どおりなのだが、手本引きと言われて観客にその難しさがどこまで分るだろうか。私も『小博打のススメ』を読んでいたからその難しさがやっと想像できたが、普通チンプンカンプンだろう。さらにこのスーパー女子高生を加賀まりこが演じるのは無理だった。松竹の方針なのだろうが、ミスキャストと言って良いだろう。

 映画を見なかったら慎太郎の小説を読み返すことはなかった。まあ、もう二度と読まないだろうが。

 

 

<あの頃映画> 乾いた花 [DVD]

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  • 発売日: 2013/01/30
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小博打のススメ(新潮新書)

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