大林宣彦監督『時をかける少女』を見る

 4月10日に大林宣彦監督が亡くなった。私は大林監督の映画を1本も見たことがなかった。あまり興味がなかったから。しかし亡くなってマスコミに追悼記事がいくつも紹介され、巨匠と書いているのもあった。
 そんな折、日本テレビが大林作品を放映した。それで初めて大林宣彦監督の『時をかける少女』を見た。
 まだ少女の原田知世が主演した筒井康隆原作のSF映画だ。ストーリーはどうということもなく、おそらく原田知世の可愛さだけを訴える映画なのだろう。高校生を主たる観客として訴求しているような映画だと思った。つまり原田知世は大人の興味を引くには子供過ぎるし、演技もさしてうまいとも思えない。さらに大林の演出も巧くないどころかむしろ下手と言っていいのではないか。子どもっぽい原田の魅力をそれ以上引き出すこともできなかった。
 ところがこれが興行的には当たったようだった。なぜだろう。角川の宣伝戦略が上手かったのだろうか。原田の魅力が高校生以外にも届いた? いやそれはないだろう。
 以前、映画は監督で選ぶと言ったら、知人からいや俳優だろうと反論された。むかしよく行っていた木冬社の芝居に毎回主演していた平幹二朗が出演を取りやめた途端、それまで毎回満席だった客が半分になった。つまり半分は平幹二朗を目的に来ていたのだった。客は俳優を見に来るのだ。ところがこの映画では花となるべき俳優が見当たらない。なぜヒットしたのだろう。
 大林の演出も下手だった。時間を行き来するという設定を分かりやすく表現できていない。時間が何度も繰り返すという重要なことをきちんと伝えきれていない。まあ、それは原田知世の可愛さを訴求するのが目的の映画と考えればどうでもよいことなのかもしれない。
 分からないのは、こんな花のない少女俳優原田知世の主演映画がなぜヒットしたのかという事だけだ。
 前後してみたオードリー・ヘップバーンの『ティファニーで朝食を』が、映画としては必ずしも良い出来ではないのに、オードリーの魅力で世界的なヒット作となったことと、似ている印象を持った。『ティファニー~』についてはまた後日。

 

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