秋吉久美子・樋口尚文『秋吉久美子 調書』を読む

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  秋吉久美子樋口尚文秋吉久美子 調書』(筑摩書房)を読む。映画評論家で映画監督でもあり、秋吉の大ファンでもある樋口が、秋吉久美子に長時間インタビューしたもの。秋吉久美子といえば藤田敏八の映画『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』に出演して一時期の若者たちのアイドルだった。私も結構好みの女優だったが、映画は1本も見たことがなかった。男性週刊誌のヌードグラビアに取り上げられていたんじゃなかったっけ。

 秋吉の映画を残らず見ているような樋口のインタビューは詳しい。また秋吉もそれに淡々と答えている。変に気取ることもなく、読んでいて好ましい。でも一番の読みどころは、秋吉の語る監督たちの演出の癖だ。これがとても参考になる。

 自分についてこんな風に言っている。

 

秋吉久美子」はイデオロギーにとらわれたくもないし、「はみだし劇場」(内田栄一主宰)みたいなアンダーグラウンドの側でもないし、大道のメジャーの側でもない。あることに熱狂したり迎合したりするのをクールに拒みながら、自分の精神の領分を守り通したいんですね。だから、たとえばマルグリット・デュラスの『モデラータ・カンタービレ』の意固地な主婦や『源氏物語』の空蝉のように、ある覚悟をもって激情に身をゆだねない女性像には共感します。

 

 

 『昭和枯れすすき』を撮った野村芳太郎監督について、まず旅館で1日監督と二人でブレーンストーミングみたいなことをやった。さらに撮影の日も午前中は全部リハーサルに当てて、そしてそれをテープに録って、そして本番では「秋吉君、もう一回聞いてごらん。君のテンション、それじゃなかったよね」と思い出させてくれる。野村監督はそういう丁寧な工程を踏んでくれた。

 ついで河崎義祐監督で『挽歌』を撮る。

 

……私を代表するアイコンとしては『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』があって、『十六歳の戦争』も女優らしさを身につけたモニュメンタルな作品ではあるんですが、自分の中で、気持ちが凄く充実して、自然に力が出せたと思うのは、実は『挽歌』です。

 

 『不毛地帯』を撮った山本薩夫監督。「山本監督は古きよき時代の男性という感じです。芸術家肌っていうよりは、大きな企業の経営者だったりしそうな器の大きい感じ」。

 長谷部安春監督の『レッスン LESSON』。

 

(長谷部は)石原プロのテレビ映画(『大都会』シリーズ)などのアクション物もたくさん撮っていた監督です。だから男性的とうことなんですが、俳優がナイーヴになっているシーンの前に怒鳴ったりとか、撮影中にじゃまなものがあると何でもかんでもわらっちゃう(画面から外す)ようなこともあって、そういうことの連続に私もダメージを受けた。

 

 秋吉久美子は私好みの女優だったが、映画を見ようとまでは思わなかったのはなぜだったろう。ちょっと似た子と少し付き合ったことがあったけれど。機会があったら『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』のどれか見てみたい。

 

 

 

秋吉久美子 調書 (単行本)

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