若井敏明『謎の九州王権』を読む

 若井敏明『謎の九州王権』(祥伝社新書)を読む。大和王権の前に九州王権があったという主張。そういわれればすぐ古田武彦の九州王朝を連想する。若井も古田のこと十分は意識していて、「はじめに」で古田との違いを述べている。

 

……古田武彦氏の九州王朝説と私説との違いである。古田氏は、邪馬台国が九州にあったことと、『三国志』の『魏書』東夷伝倭人条以降の中国史書にみえる倭には連続性が認められることを主な根拠として、九州を領土とする王朝が弥生時代から7世紀末まで存在したとする。

 しかし、中国・朝鮮の史料にみえる倭や、いわゆる倭の五王(讃・珍・済・興・武)はヤマト王権を指すと考えている。

 

  若井は邪馬台国も九州の山門にあったと考えており、景行天皇が九州に攻め入り、大分、宮崎、熊本、島原、阿蘇まで征服したとする。のちに仲哀天皇が再び九州を攻め、討ち死にするも神功皇后が九州勢力を平定したとする。そして継体天皇治世下で磐井が反乱(磐井の乱)し、朝廷が派遣した物部氏によって滅ぼされたとする。

 しかし、少なくとも「倭の五王」を近畿王朝の天皇に比定するのは大きな矛盾がある。和の五王こそ九州王朝の王たちとするのが論理的なのだ。

 題名に反してあまり参考にならなかった。

 

 

 

謎の九州王権 (祥伝社新書)

謎の九州王権 (祥伝社新書)

  • 作者:若井 敏明
  • 発売日: 2021/03/01
  • メディア: 新書