読売新聞書評委員が選ぶ2020年の3冊が読売新聞に発表された(2020年12月27日付け)。読売新聞の書評委員20人、それによみうり堂店主が3冊ずつあげている。都合63冊だ。そのうち、私が読みたいと思ったのが3冊だった。それを紹介する。
アレン・ギンズバーグ著『吠える その他の詩』(スイッチ・パブリッシング、1500円 柴田元幸訳)
本書は1955年、閉塞した時代のアメリカで描かれた長編詩の新訳。人間らしくあろうとして傷ついた世を憂え、魂の地獄から持ち帰った愛を歌う声が今ますます切実だ。
藤森照信著『藤森照信 建築が人にはたらきかけること』(平凡社、1600円)
この著者は日本近代建築の悉皆調査で知られ、縄文的宇宙観を生き、自然と人間をつなぐ建築を実践してきた人。インタビューによる自伝が痛快無比である。
『吠える その他の詩』は50年以上前、諏訪優の優れた訳がなされている。たしかに半世紀以上経ったのだから新訳が出るのも十分意味があるだろう。どんな訳をされているのかぜひ読んでみたい。
尾崎真理子、早稲田大学教授・読売新聞調査研究本部客員研究員の推薦書
古井由吉著『われもまた天に』(新潮社、2000円)
いつも遠くから眺めていた畏敬の作家は、未完となった遺稿の短編、その最後に鮮烈な一行を記して去った。衝撃はさめやらない。
古井由吉は作家たちが高い評価を与えている。いままできちんと読んでこなかった。やはり読むべきだろう。